静岡県の点群が大ブレーク!地下透視、防災からゲーム、VRまで多彩な活用
2020年6月8日

管理人のイエイリです。

静岡県は2020年4月、合計15テラバイトもの高精度点群データを社会基盤情報流通推進協議会(AIGID)が運営する「G空間情報センター」のウェブサイトで無料公開しました。(詳しくは、2020年5月7日付けの当ブログ記事を参照)

これだけの点群データが公開された反響も大きく、思いがけない活用方法も明らかになってきました。

点群データを使った数々の例が、静岡県交通基盤部の土木技術者、杉本直也氏のFacebookで紹介されています。

杉本直也氏のFacebook。自らのテーマ画像にも河津七滝ループ橋の点群データを活用(資料:杉本直也氏)

YouTubeなどで公開されている作品も多いので、当ブログでも勝手に紹介させていただくことにしましたのでお許しください。

まずは建築・土木の実務とは180°違った世界での活用です。Yochuke Oko氏は個の点群データを使用して、熱海の街並みを

ナ、ナ、ナ、ナント、

マインクラフト化

してしまったのです。


YouTubeサイトで公開されている静岡点群マインクラフト化「熱海」(動画:Yochuke Oko)

マインクラフト(Minecraft)とは、立方体のブロックを設置したり、破壊したりして遊ぶゲームです。これだけリアルな熱海の街並みをマインクラフトの世界で実現できたのも、点群データのおかげですね。

点群データを地上目線からグーグルストリートビューっぽくムービー化したのは、海行(うみゆき)氏です。5月16日にツイッターで公開したところ、約2週間で20万回以上も再生されました。

「静岡県が公開してくれた点群データをUnityで表示してみました」というメッセージとともに、海行(うみゆき)氏がツイッターに投稿したムービー(画像をクリックするとムービーに飛びます)

また、実用的なアイデアとしては、地上の点群データと地下構造物の3Dモデルを合体して、地上から地下を“透視”できるようにしたムービーを、大矢洋平氏がFacebookで紹介していました。

地上の点群データを地下構造物の3Dモデルと合体して“透視”できるようにした例(資料:大矢洋平氏)

防災面で活用できそうなのが、八千代エンジニヤリングの山本一浩氏の傾斜度ヒートマップです。点群データから樹木を取り除いて山の斜面の傾斜を計算し、傾斜度に応じて色分け表示しました。

点群データから樹木を削除し地盤の傾斜度を見える化したヒートマップ(資料:山本一浩氏)

静岡県が公開した点群データは、細かいメッシュに分かれて提供されています。そのため、場合によっては複数のメッシュの点群をダウンロードする必要もあります。

そんなとき、便利なのが松澤有三氏が開発し、公開している点群ダウンロード用の非公式ツールこと「shizuoka-2019-pointcloud」です。

WEBサイトのマップ上に表示されている2つの水滴形マーカーで必要な点群の範囲を対角線で囲むと、その範囲の点群データのURLが一覧表として表示されます。

点群ダウンロード用の非公式ツール(資料:松澤有三氏)

大容量の点群データを、WEBサイト上で公開したいときに便利なのが、ソフトウエア開発用のプラットフォーム「GitHub(ギットハブ)」上で公開されている「Potree」というツールです。

ドローン・アンド・カンパニーの村松直彦氏は、このPotreeを使って航空レーザー測量やMMS(モービルマッピングシステム)の点群データを、WEB上で見られるようにしました。

WEB上で点群データを見られるツール「Potree」で網代漁港付近の点群を表示した例。画像をクリックするとPotreeサイトに飛びます(資料:村松直彦氏)

これらの点群データ活用は、ゲームエンジンの「Unity」を使ったものが少なくありません。点群データをVR(バーチャルリアリティー)で表示するまでの過程には、点群データについての基本的な知識や点群を間引いて軽くするなどの下処理、そしてUnityへの読み込みなど、様々なデータ処理が必要になります。

こうした一連の処理について参考になるのは、情報発信サービス「note」上でJun Ito氏が公開している「【PointCloud】大量の点群データをUnityで読み込んでVR化する!【メタバース】」という記事です。

その名の通り、点群データをUnityに読み込んでVR化するまでの内容が教科書的に丁寧に書かれており、

数々のプログラムコード

が惜しげもなく解説されています。

点群データをUnityでVR化した作品の例。画像をクリックすると動画に飛びます(資料:Jun Ito氏)

静岡県が点群データを公開したときは、「これからの土木・建築のプロジェクトで役に立ちそうだな」くらいにしか思っていませんでしたが、まさかゲームエンジンとの連携まで広がるとは“斜め上”への用途拡大にビックリです。

そして、これらの事例を通じて、「Potree」などの新しいシステムについて、世界が広がっていくのを感じました。

日本の社会インフラには、これまでの維持管理業務などで膨大な量のデータが蓄積されていると思います。

これらを思い切って公開してみると、様々な専門知識を持つ人たちによって、新たな活用方法や維持管理のアイデアもそしてイノベーションが起こるかもしれませんね。

静岡県の点群データ公開は、その方向性を切り開いたと言っても過言ではありません。

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