管理人のイエイリです。
2020年10月1日、グッドデザイン賞(運営:日本デザイン振興会)の発表がありました。
1957年に創設されたこの賞は、家電やクルマなど大量生産される工業製品の外観デザインに与えられる賞というイメージを持っておられる方も多いと思いますが、サービスやソフトウエアから、働き方改革の仕組みまで、幅広いものが対象になっています。
その証拠に、今回、受賞した作品の中には、
ナ、ナ、ナ、ナント、
VIRTUAL SHIZUOKA
が含まれていたのです。(グッドデザイン賞「VIRTUAL SHIZUOKA」のウェブサイトはこちら)
「VIRTUAL SHIZUOKA」とは、静岡県交通基盤部が運営する3次元点群データが無料で使えるウェブサイトです。
県内の工事で使われた点群データのほか、富士山南東部や伊豆半島の東部エリアの1050km2を、航空レーザーやMMS(モービルマッピングシステム)などで計測した膨大な点群データなどが収められています。
建設のプロのほかゲームや映画分野のユーザーもこの点群データを使って、ユニークな作品を作成・公開しています。
受賞に当たっては、仮想空間に3Dで県土を構築するという取り組みを静岡県が主導し、オープン化したことなどが評価されました。
インフラ系では熊本県内を流れる球磨川の下流に設けられた「八の字堰(せき)」(事業主体:国土交通省 九州地方整備局 八代河川国道事務所)の受賞が目を引きました。
かつてあった瀬を復活させるため、河床を床固工によってかさ上げしたプロジェクトで、約400年前に加藤清正によって築造されたという「八の字堰」を、水理実験やシミュレーションという最新技術でデザインしたものです。
八の字の結果、アユの遡上数の増加も確認されたとのことです。
工業製品としては、トプコンのレーザースキャナー搭載型トータルステーション「GTL-1000」や、現場での墨出しなどに簡単に使える測量機「LN-150レイアウトナビゲーター・杭ナビ」が受賞しました。
これらは国土交通省が推進する、3Dデータによる建設業の生産性向上施策である「i-Construction」の対応工事などで、使われています。
建設関連のアプリやクラウドサービスも受賞が相次ぎました。オーセブン(本社:埼玉県さいたま市)が開発・販売するiPad用の3D間取りアプリ「SpeedPlanner」もその一つです。
iPadの画面上にフリーハンドで間取り図を描いていくと、それがきれいなCAD図面に自動変換され、3Dモデルまで簡単に作れる画期的なアプリです。
しかし、グッドデザイン賞の2次審査は、無人の展示ブースをによって3分程度で行われるため、アプリのような使い勝手がものを言う製品をどうやって短時間で伝えるかが課題でした。
そこでブースにiPadを置いて審査員に図面作成を体験してもらうほか、2分程度のムービーを作り、短時間でアプリの動作を理解してもらえるように工夫したそうです。
住宅・不動産関係のスマホ用アプリとしては、一条工務店住まいのサポートアプリ「iサポ」や、非対面で完結する不動産投資購入体験「RENOSY ASSET」(GA Technologies)なども受賞しました。
人手不足問題に直面する工事現場をサポートするクラウドサービスも受賞しました。岩手県北上市の建設会社、小田島組が2019年9月に開始した工事現場写真整理代行サービス
カエレル
です。(グッドデザイン賞「カエレル」のウェブサイトはこちら)
スマホなどで撮影した現場写真を専用パソコンに保存するだけで、“クラウドの中の人”が着々と工事写真を整理してくれるサービスです。
このサービスによって現場技術者の残業時間が毎月40時間から10時間以下に減ったことを象徴するような「カエレル」とわかりやすいネーミングや、シンプルな使い方などが評価されました。
小田島組ではこのほか、施設ブランディングとして本社ビルの「キタカミオーツー」、産業のための建築・空間・インテリアとして「キタカミオーツー」も受賞しており、単独企業で三つのグッドデザイン賞を同時受賞したのは「岩手県初」の快挙です。
今回のグッドデザイン賞には、4769件もの応募があり、うち1395件が受賞しました。
これだけ多数の応募作品の中から、外観のデザインだけでなく、建築・土木・不動産を支える裏方の製品・サービスにもスポットを当てて受賞作を選んだ審査員にも、グッドデザイン賞をあげたいですね。