管理人のイエイリです。
建設業のものづくりと言えば、現場ごとに資材を手配し、多くの作業員が様々なものを作り、現場監督の肉眼で施工管理を行う方式がずっと続いてきました。
しかし、人手不足が今後、何十年も悪化する一方の日本では、現場に多くの人間が集まって工事を行う従来のものづくりスタイルは、そう長くは続きそうにありません。
そこで大和ハウス工業は昨日(2020年9月30日)、施工現場の改革に向けて二つの記者発表を行いました。
その一つは、日本電気(NEC)と協業する、施工現場のデジタル化の実証実験です。10月から大阪の本社や東京本社など全国10カ所の事業所に「スマートコントロールセンター」を設け、
ナ、ナ、ナ、ナント、
施工管理をテレワーク化
しようというのです。(大和ハウス工業とNECのプレスリリースはこちら)
「スマートコントロールセンター」は、複数の施工現場映像や作業員のデータをテレワークによって一元管理できるシステムです。
まずは戸建て住宅の施工現場にはカメラやセンサーなどを設置し、そのデータをセンターで収集。センターのモニターを通じて常時、5つの現場の品質管理や安全管理などを遠隔で行えます。
また、各現場でも、現場監督者や作業員がタブレットやスマートフォンで同じ情報を共有できるようになっており、コミュニケーションが高まるほか、作業効率の向上にもつなげます。
さらに実証実験では、NECのAI(人工知能)技術によって現場の映像を分析し、掘削やコンクリート打設などの進捗(しんちょく)状況をデータベース化し、工場部の部材生産や物流倉庫からの部材輸送と連携して工程の最適化を目指します。
安全面では作業員や建機、部材などの位置情報をデータベース化して、建機による巻き込み事故や部材の落下事故などの危険を予知します。
このほか、NECの「建設現場顔認証forグリーンサイト」と連携し、作業員の入場実績や体温、血圧などのバイタルデータと組み合わせて、作業員の健康管理も行います。
大和ハウス工業は2021年4月以降、遠隔管理の対象を戸建て住宅から店舗や物流施設などの大きな現場に拡大し、現場監督者の作業効率を3割向上していきます。
一方、NECは2021年度中を目標に、一般の現場でも施工管理のテレワーク化が行えるようにして、建設業界での展開を目指します。
同じく9月30日、大和ハウス工業は、デジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みを加速するため、米国オートデスクとも戦略的提携に関する覚書を交わしました。
その大きな目的は、
次世代の工業化建築
の実現です。(大和ハウス工業、米国オートデスクのプレスリリースはこちら)
大和ハウス工業は創業当時からのプレハブ住宅事業で「建築の工業化」を実践してきました。
今回の米国オートデスクとの戦略的提携によって、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)による生産性向上やデジタル技術の活用によって、工業化建築を次世代に向けて変革させることを狙っています。
建築の工業化と言えば、6月に米国の経営コンサルタント、マッキンゼーが発表した「建設業の次の普通(原題:”The next normal in construction”)」という英文レポートがありました。(詳しくは、2020年6月24日付けの当ブログ記事を参照)
そこに書かれていたことは、「建設業は今後、建物などの部材を工業製品のように標準化・モジュール化しして工場生産し、計画的な生産・物流体制によって効率的なワークフローにする必要がある」、そして付加価値が発生するのは「建設会社から工場へシフトする」ということでした。
大和ハウス工業が今回、発表した2件の協業は、まさにこの流れに沿った建設業改革の始まりと言っても過言ではないでしょう。