管理人のイエイリです。
2018年9月、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)とEC(電子商取引)を連動し、建築生産システム全体をワンストップ化することを目指す「BIM-ECコンソーシアム」が発足しました。(詳しくは、2018年9月12日付けの当ブログ記事を参照)
あれから2年、このコンソーシアムについて表だった情報は特に見聞きしなかったので、「その後、あの活動はどうなっているんだろうか」と思っていたところ、
ナ、ナ、ナ、ナント、
実証実験の活動報告書
が、同コンソーシアムから送られてきたのです。(BIM-ECコンソーシアムの活動報告書はこちら)
そして、コンソーシアム事務局の代表幹事を務めるスターツコーポレーションの関戸博高氏らに、オンライン取材をお願いし、この2年間の活動内容について直撃インタビューしました。
BIMといえば、3Dで建物のデザインや設計を検討したり、施工シミュレーションを行ったりという、技術的なことが頭に浮かびがちですが、このコンソーシアムでは建材や設備などの見積もりや発注、製作、納品、決済といったメーカー側の「商流」にフォーカスしているのが特徴です。
まずはプロジェクト関係者間の情報の流れをBIMのワークフローとして整理しました。
設計事務所や建設会社だけでなく、その受注者となる建材メーカーでの見積もり、受発注から物流、納品、そして金融機関による決済までを含めた、すべてのプロジェクト関係者を含めたのが特徴です。
そして、それぞれのプロジェクト関係者がBIM-ECが実現されると、どんな効果が期待できるかを整理しました。その中には「在庫削減の合理化」(メーカー)、「物流の効率化」(商社)、「決済事務の合理化」(金融)といった、これまでBIMの話題にはあまり出てこなかったメリットも明らかにしました。
続いて行ったのが、テナントビルや賃貸マンションの建設を想定した実証実験です。
建築生産システムを発注前の「第1フェーズ」、見積もりから受発注までの「第2フェーズ」、製作から物流・納品までの「第3フェーズ」に分け、3つの実証実験を行いました。
BIMソフトには、福井コンピュータアーキテクトの「GLOOBE」に見積もり機能を付けたものを使い、各フェーズで建材メーカーがBIMモデルを活用して、自社業務の効率化が図れるかを、3つの実験で確認したものです。
「BIMデータを用いたサッシ見積もり」の実験はYKK AP、「BIMデータを用いた照明器具見積もり」の実験はアイリスオーヤマ、そして「専門工事業者によるBIMの実証」は伊藤忠商事のグループ会社であるISエンジニアリングと、TOTOの施工代理店であるユアサクオビスが行いました。
実証実験の結果、建材の商流に関する「属性情報」のルール整備や、BIMモデルへの実装、発注時のデータを正確にすることの必要性などが明らかになりました。
例えば、アイリスオーヤマが行った照明器具の見積もり実験では、アイリス側が必要とする属性情報を盛り込んだBIMデータを設備用BIMソフト「Rebro」を使って用意し、それを設計者や施工者に提供するという場面もありました。
その結果、設計者や施工者は属性入力が楽になり、アイリス側では戻ってきたBIMモデルを自社システムと連携させて業務の生産性向上が期待できました。
自社のためだけでなく、他社が必要とする属性情報をBIMモデルに入力することで、お互いの生産性を高め合うのは、
物流版“思いやりのBIM”
と言えるでしょう。
一方、建材の流通には代理店や施工会社などの中間業者を経たり、「ネゴ交渉」「出精値引き」を行ったりと、ケース・バイ・ケースで決まる価格決定プロセスも、いまだに残っています。
これらはBIMによる見積もりの精度にも影響を与えます。しかし、建物の発注者にとっては、ネット通販のように価格の透明性が高い“明朗会計”の方が安心して発注できます。
BIMが建物の商流に浸透してくることで、こうした不透明な商慣習がなくなっていくのも時代の流れでしょうか。
BIM-ECコンソーシアムの成果を生かすためにはもちろん、多くの参加者に使ってもらう必要があります。これまで、1業種1社のメンバーで活動してきましたが、今後は参加者を広げていくことも求められそうです。
●BIM-ECコンソーシアムの組織体制
【代表幹事】 【幹事】 【正会員】 【事務局】 |