管理人のイエイリです。
比叡山延暦寺(ひえいざんえんりゃくじ)は、天台宗の開祖であり、伝教大師として知られる平安時代の僧、最澄が建てたものです。
最澄は822年6月4日に入滅(亡くなること)し、延暦寺では今年(2021年)6月4日、「伝教大師1200年大遠忌」の行事が行われるとともに、国宝の根本中堂や根本中堂廻廊では、大改修工事が行われています。
この現場では、国宝や重要文化財ならではの珍しい屋根のふき替え工事や、蟇股(かえるまた)と呼ばれる部材に施された彫刻の彩色修理などが行われていますが、当然のことながら一般人は立ち入り禁止です。
「ぜひ、現場見学に行ってみたい」という一般人の願いに応えて、延暦寺では太っ腹な対応をしてくださいました。
この貴重な工事現場を、
ナ、ナ、ナ、ナント、
VRで自由に見学
できる「比叡山延暦寺VRウォークスルー」を、4月29日にインターネット上で一般公開したのです。(伝教大師最澄1200年魅力交流委員会のプレスリリースはこちら)
このVR(バーチャルリアリティー)は、現場を色付きの点群データとして記録できるMatterport(マーターポート)という機器を使い、exAgent(本社:京都府日向市)が撮影したものです。
工事現場を取り巻く廊下や足場などのあちこちに、この機器を据えて記録した3Dのパノラマ映像を合体しました。足場上などをGoogleストリートビューのように移動しながら、ウォークスルーを楽しめます。
瓦が撤去された屋根の下地全体を見渡したりできる一方、蟇股(かえるまた)と呼ばれる部材の彩色修理や、屋根の木材が腐食しないように差し込まれていた銅板など細かな部材が整理整頓されているところも見られます。
また、最澄の時代から1200年間、ずっとともし続けられていると伝わる「不滅の法灯」もVRなら見に行けます。
これらは、Matterportが据え付けられた場所を視点とした映像ですが、3D点群ならではの面白さは、撮影地点から離れた
空中やわき道
にも自由自在に移動して、現場をさまざまな角度から見られることです。
ちょっと画像が粗かったり、3Dモデルが不連続になっていたりするところも多々ありますが、生の3Dモデルの“裏側”を自由に見られる満足感を味わえますよ。
さらに延暦寺の現地では、「比叡山延暦寺AR体験」というアプリ(iOS版はこちら、Android版はこちら)を使って、スマートフォンやタブレットで改修後の根本中堂の姿をAR(拡張現実)で見ることができます。
これらのVRウォークスルーやAR体験は、比叡山延暦寺が文化庁による「先端技術を活用した日本文化の魅力発信事業」の支援を受けて作成したもので、2026年3月末まで公開される予定です。
国宝などの修復現場はこれまで、ほとんど見学する機会がありませんでしたが、VRやARを通じて中をのぞくことができると、ファンも増えそうですね。