管理人のイエイリです。
スペイン南部のウェルバに本拠を置くシーベリー(Seabery)が公開したYouTube動画には、VRゴーグルのようなものを頭にかぶり、手袋を着け、両手にペンのような物を持って青い物体を前に慎重に作業している人の姿が映っています。
その様子をクローズアップして見ると、青い物体やペンのような物には、たくさんのQRコードのような物が書いてあります。
いったい、これは何をやっているのかと言うと、
ナ、ナ、ナ、ナント、
ARで溶接のトレーニング
を行っているところなのです。
このシステムは、AR(拡張現実)の技術を使って、溶接作業の訓練を行う「SOLDAMATIC」というシミュレーターです。
VRゴーグルをかぶると、青い物体やペンのようなものはそれぞれ、現場にある鋼材や溶接棒のように見え、溶接棒を鋼材に近づけるとアーク火花が飛ぶ中、溶けた溶接棒が鋼材の間を「ビード」として埋めていく過程が再現されます。
溶接の出来栄えは、VRゴーグルを通して確認できるほか、採点システムによって点数化されます。
これまでの溶接の練習は、実物の鋼材や溶接棒を使って行うので、材料費がかかるだけでなく、溶接時に発生するガスや高温などによる危険もありました。
その点、ARを使った溶接の練習は、材料費がかからず、安全に、きれいなビードが作れるようになるまで何度も繰り返して行えます。
突き合わせ溶接やすみ肉溶接など、様々な継ぎ手用の模型が用意されており、様々な姿勢やパターンで溶接棒の動かし方を学べます。
溶接シミュレーターを使った訓練の様子。部屋の向こう側では、実際の溶接機を使った訓練が行えるようになっており、シミュレーターで練習した成果を実物で確かめられる●
こうなると、
溶接の通信教育
もできそうですね。
このほか、溶接ロボットのシミュレーターも用意されているので、ロボットのプログラミングを行ってどのように溶接機が動くのかを訓練することもできます。
同社によるとARシミュレーターによる溶接訓練は、従来の訓練と比較して、資格取得率を34%高め、訓練時間を56%短縮し、コストを68%低減し、事故を82%減らせるということです。
溶接業界も建設業と同様に、若い人材の確保が難しいようです。ARによる溶接トレーニングは、若い人材を伝統的な技術に興味を持ってもらうきっかけにもなりそうですね。
このシミュレーターは日本でも販売されており、旭エレクトロニクス(本社:東京都新宿区)が代理店になっています。