管理人のイエイリです。
2021年夏、札幌と東京で開催された東京オリンピック・パラリンピックのマラソン競技では、コース上の路面にピンクや緑で最短経路を示す「ガイドライン」と呼ばれる路面表示が設置されました。
このガイドラインの施工を担当したのが、北海道技建(本社:北海道小樽市)という会社です。
施工範囲は札幌市のほか東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県にまたがり、道路使用許可は約60の自治体と約70の警察署に対して行う必要がありました。大会直前にラインを引き、そして、大会が終わった後は、すぐにラインを消す作業もあります。
そのスピーディーな作業の様子がこのほど、明らかになりました。まずはラインの施工を行うための図面ですが、
ナ、ナ、ナ、ナント、
点群のオルソ画像
をそのまま図面化したのです。
これらの図面を作成するに当たり、同社はMMS(モービル・マッピング・システム)で総延長約600kmにもわたる点群データと映像を取得しました。
そしてバスマーク路面表示900カ所、ピンク色路面表示8km、オリンピックマラソン競技14km、パラリンピックマラソン競技42km分の膨大な枚数の図面を、真上からみたモノクロ点群(オルソ画像)に寸法線を入れるなど簡単な加工で作れるようにしたのです。
これで図面作成にかかる時間は大幅に削減されました。
ラインを引く作業は、約50人が3班から8班に分かれて行いました。Google Mapsの「マイマップ機能」や、Web GISを使ってクラウド上で図面や交通規制図、着工前や完成写真を共有し、現場ではタブレットやスマートフォンでこれらの情報を見ながら施工しました。
これらのラインやマークは、通常の道路マーキングのような立派な仕上がりであることが、テレビの中継を見ていてもよくわかりましたね。
そして、不思議なのはあれだけしっかり引かれていたラインが、競技後、一夜にしてきれいさっぱりと消えたことです。
その秘密は、このライン引きに使われたのが、
“消えるペンキ”
だったからなのです。
英国製の「RENU WB」という水性の路面表示用塗料で、ロンドンオリンピックでも使用実績があります。
消すときは「リムーバー」という専用の液体を噴射して溶かし、洗車機程度の水圧で洗浄すると、舗装面に全くダメージを与えずに消えるのです。洗浄水もその場で回収するので、環境にも優しい工法です。
特に東京で行われたパラリンピックでは、競技当日の交通規制が残っている間に、消去するという世界初のスピード施工を実現しました。
今回の工事は、オルソ画像による図面作成というアイデア、クラウドによる施工管理という情報管理、そして消えるペンキという新材料を駆使して、究極の生産性向上を実現しました。
これからの建設業のあり方を、示しているようなプロジェクトと言えるでしょう。