RTKなしで精度10cm以内! 西松建設が準天頂衛星「みちびき」で立野ダムのクレーン位置計測に成功
2023年1月5日

管理人のイエイリです。

人手不足がますます深刻化する2023年は、あらゆる建設現場が施工の自動化や省人化を目指して行くと言っても過言ではないでしょう。

ダム工事もその一つです。例えば、堤体のコンクリート打設に使うケーブルクレーンを自動運転する取り組みです。そのためには、吊り荷の重さや位置によって変わるフックの位置を正確に計測する必要があります、

熊本県内の立野ダム建設現場で行われている、ケーブルクレーンによるダムコンクリートの打設作業(写真:西松建設)

熊本県内の立野ダム建設現場で行われている、ケーブルクレーンによるダムコンクリートの打設作業(写真:西松建設)

立野ダムの位置や堤体断面図など(資料:内閣府)

立野ダムの位置や堤体断面図など(資料:内閣府)

熊本県内で立野ダムを施工する西松建設は、施工に使うケーブルクレーンの位置を正確かつリアルタイムに計測するために白羽の矢を立てたのは、

ナ、ナ、ナ、ナント、

準天頂衛星「みちびき」

だったのです。(西松建設のプレスリリースはこちら

準天頂衛星「みちびき」のイメージ(資料:内閣府)

準天頂衛星「みちびき」のイメージ(資料:内閣府)

谷あいで行われるダム工事現場では、GNSS(全地球測位システム)の電波が届きにく、位置補正に使う「基準局」も使えないことが多いので、別の方法はないかと考えがちです。

その点、準天頂衛星「みちびき」(2023年1月時点で5機運用中)は、日本上空を70度以上の高い角度で常に飛行しているためダム現場のような谷あいからでも電波が受信しやすいのです。

西松建設は、ケーブルクレーンの吊り荷(コンクリートバケット)部分にGNSS用のアンテナと受信機を取り付け、立野ダムの堤体周辺をくまなく動かし、準天頂衛星からの電波をもとに高精度な位置計測を安定的に行えるかどうかを調べました。

実験期間は、2021年11月28日~2021年12月13日と、ちょっと前になります。

ケーブルクレーンのコンクリートバケット部分に、アンテナと受信機を取り付けた(資料:内閣府)

ケーブルクレーンのコンクリートバケット部分に、アンテナと受信機を取り付けた(資料:内閣府)

アンテナと受信機は、三菱電機製の「AQLOC-V」を使用した(写真:三菱電機)

アンテナと受信機は、三菱電機製の「AQLOC-V」を使用した(写真:三菱電機)

その結果、バケットが上下しても、

水平約4cm、垂直約9cm

以内という精度で、FIX率約98%とほぼ常時、リアルタイムな高精度計測が可能であることが明らかになりました。

立野ダムの下流断面図と、ケーブルクレーンのバケット軌跡。堤体の下部でも98%のFIX率で、みちびきによる高精度計測が可能だった(資料:西松建設)

立野ダムの下流断面図と、ケーブルクレーンのバケット軌跡。堤体の下部でも98%のFIX率で、みちびきによる高精度計測が可能だった(資料:西松建設)

作業日ごとの測位精度とFIX率、衛星数の状況。安定した数値を示している(資料:西松建設)

作業日ごとの測位精度とFIX率、衛星数の状況。安定した数値を示している(資料:西松建設)

測位精度を高めるために使ったのは、みちびきのセンチメーター級測位補強サービス「CLAS」です。通常のRTK-GNSSと違って、位置補正情報自体がみちびきから送信されるため、基準局を設けるなどの面倒がありません。(詳しくは、2021年3月8日付の当ブログ参照

西松建設では、今回の実証実験結果を受けて、同社のケーブルクレーン自動運転システムの測位システムを、RTK測位からCLASに変更したり、他の用途に活用したりすることを検討しています。

みちびきをうまく使いこなすことで、山間部の工事や計測の生産性は、ぐっと上がりそうですね。

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