管理人のイエイリです。
インフォマティクス(本社:神奈川県川崎市)は「Microsoft HoloLens2」や「Trimble XR10」といったMR(複合現実)デバイスで、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)モデルを見られるようにするソフト「GyroEye Holo」を開発・販売しています。
同社は2021年2月19日、三重県度会町で施工中の造成現場で、GyroEye Holoの新機能を検証しました。
使用したのはHoloLens2が専用ヘルメットと一体化したXR10ですが、ヘルメットの上になんやら円盤のような金属板や小さな箱が付いています。
これらはいったい、何のために付いているのかというと、
ナ、ナ、ナ、ナント、
準天頂衛星「みちびき」
と通信するためだったのです。(インフォマティクスのプレスリリースはこちら)
MRはバーチャルな3Dモデルとリアルな現場とを重ねて見るツールです。そのためには、現場で使っているMRデバイスの位置をリアルタイムに把握して、3Dモデルと合わせる必要があります。
そこで、MRデバイスの位置を高精度にリアルタイム計測するため、みちびきから送信される電波を受信し、利用しているというわけです。
i-ConstructionのICT土工などで使われる「RTK-GNSS」は、建機自身で受信した電波に加えて、位置がわかっている電子基準点からの「補正情報」をインターネットや携帯回線などで取得し、合わせて利用することで、位置の精度を大幅に高めることができます。
みちびきは従来のGNSS(全地球測位システム)衛星と違って、約300カ所の電子基準点から補正情報を集め、宇宙から地上に向けて補正情報を送信する「センチメータ級測位補強システム(CLAS)」という機能を備えています。
そのため、みちびきからの補正情報が受信できれば、GNSS衛星の電波だけを使って
サブメートル(10cm)
程度の精度で位置を把握できます。
インフォマティクスのGyroEye Holo開発の歴史は、常にリアルとバーチャルの位置合わせをいかに高精度に行うかがテーマでした。
初期のころは、「原点」となるマーカーを、いかに正確な位置や向きに置くかが課題でした。
続いて、ヘルメットに測量用のプリズムを取り付け、自動追尾機能が付いた墨出し用のトータルステーションでMRデバイスの位置を計測する方法を開発しました。
しかし、トータルステーションを使っても、見通せない場所までは追跡できなかったり、距離の制限があったりしました。
今回、「みちびき」による位置計測技術が開発されたことで、どんなに広大な現場でも、リアルとバーチャルの位置合わせに悩む必要がなくなったのです。
そして、リアルなマーカーはバーチャルな「空間アンカー(Microsoft Azure Spatial Anchors)」に変わりました。
HoloLens2やXR10の開発者も、まさか日本のベンダーがここまでの機能を開発するとは思ってもみなかったのではないでしょうか。インフォマティクスの地道な努力は、着々と成果をあげていますね。
今回の実証実験について、詳しくは「2021年3月5日付けのサクセスストーリーコーナー」をご覧ください。