管理人のイエイリです。
国土交通省の調べによると、建築確認の電子申請比率は年々高まり、2021年度の第1四半期では、20%に達しています。同省では、電子申請の比率をさらに高めていく目標を立てています。(国交省 建築確認等手続きの電子化について)
建築確認申請の電子化と言えば、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)によるものを想像しがちですが、現在はまだまだ、紙の提出書類一式をPDF化して、審査機関のウェブサイトからアップロードする方法が主流のようです。(国交省 審査機関向け建築確認電子申請の概要)
兵庫県西宮市でも、電子申請の導入を検討していますが、紙の図面からPDFに切り替えることによる課題も抱えています。
その理由は、審査する過程で、
ナ、ナ、ナ、ナント、
図面への手書き
が必須条件になっていることなのです。(TransRecogのプレスリリースはこちら)
西宮市では、建築確認のほか、同市独自の「開発事業等におけるまちづくりに関する条例」があり、条例への適合を審査する開発指導課が窓口となり、両課が同時並行で審査を行っています。
開発指導課では、敷地面積、外壁後退距離、階数・高さの審査を行う際、審査担当者が紙の図面に直接書き込み、チェックしています。
基準への適合を厳格に審査するため、複数人が審査を行いながら図面に書き込み、その履歴が図面へのチェックという形で積み重なっていくので、「図面への書き込み」が必須条件なのです。
この問題を解決するため、西宮市が着目したのが、東京都立大発のベンチャー企業、TransRecog(本社:東京都港区)が開発したWindows用PDF書き込みソフト「AxelaNote」です。
PDFファイルを編集するソフトもいろいろと市販されていますが、メモを書き込むときにマークしたり、テキスト枠を入れたりするのに手間がかかり、動作が重たかったりして、効率的でない場合も多々あります。
その点、AxelaNoteは、PDF図面の上に透明シートのレイヤーをかぶせて、そこにメモや手書きを行う方式なのでどんなPDFでも編集できるのです。
今後、西宮市とTransRecogは共同して、AxelaNoteを図面審査に使いやすくするための実証を進めていきます。
西宮市は実務面の課題
を洗い出し、TransRecogは課題を解決するためにAxelaNoteの改良やソフト面、ハード面でのコンサルテーションを行っていきます。実証プロジェクトは、2023年2月上旬から同6月下旬を予定しています。
また、PDFによってはコピペや編集、印刷ができない設定になっているものもありますが、AxelaNoteを介することで制限のあるPDFも印刷できるようになります。
つまり、PDF図面ならではの面倒がなくなり、紙のような自由が取り戻せるというわけですね。
建築確認へのBIM導入も大事ですが、取りあえず紙図面のワークフローのまま、PDFで図面を「デジタイゼーション(電子化)」し、どこでも作業できる「デジタライゼーション(業務の効率化)」を行うことも、建設DXへの第一歩を踏み出す上で意義がありそうです。