管理人のイエイリです。
真夏の工事現場で働く人を熱中症の危険から守るのは、すべての建設会社にとっての共通課題です。
そこで、建設業界が抱える「共通領域」の技術開発に取り組む建設RXコンソーシアムでは、7月から8月にかけて熱中症を効率よく予防するための実証実験を行うことになりました。
実験に参加するのはコンソーシアムの市販ツール活用分科会バイタルセンサーワーキンググループに参加する安藤ハザマ、鉄建建設、前田建設工業、日立造船の4社と、シャープ(本社:大阪府堺市)、Biodata Bank(本社:東京都渋谷区)です。
現場で働く人の健康状態を見守るのは、Biodata Bankが開発した熱中症対策ウォッチ「カナリア」です。ウォッチと言っても、時刻を見たり、タイマーをセットしたりするための時計ではありません。
アラーム音がなったり、LEDが光ったりしてお知らせするのは、健康状態が
ナ、ナ、ナ、ナント、
熱中症の“二歩手前”
までに迫った時なのです。(Biodata Bankのプレスリリースはこちら)
カナリアには「身体の熱の産出と放出を検知する独自開発の「熱ごもりセンサー」を搭載しており、アラームがなった時には塩分・水分の補給や涼しい場所での休憩を促します。
ワンシーズン使い切りというコンセプトで開発され、一度、電源がオンになるとオフになることはありません。
実証実験では、現場の作業員はカナリアを手首に着けて作業を開始します。体の深部体温が上昇した場合はアラームがなるので休憩を行います。
休憩時に、効率的に体温を下げるため、シャープが開発した適温蓄冷材を手のひらに当てて、
人間をプレクーリング
するのです。
夏場に施工する「暑中コンクリート」も、発熱を抑えるために骨材や水をあらかじめ冷やしておく「プレクーリング」を行いますが、これと同じような発想で、次の作業に備えて人間自体を冷やしておこうというわけですね。
手のひらには体温調節用の「AVA血管」という特殊な血管が通っており、手のひらで冷えた血液が体内をめぐって深部体温の上昇を防ぎます。
しかし、冷凍食品の輸送などで使う一般の蓄冷材は、温度が低すぎて手のひらが痛くなるうえ、血管が収縮するため効率的に体を冷やすことができません。
そこでシャープでは、セ氏10度で誘拐する適温蓄冷材を開発しました。これだと休憩中、気持ちよく使うことができ、体も効率よく冷やせるというわけですね。
シャープがこんな技術を持っているのは、寒冷地から酷暑地まで幅広い地域で使える液晶モニターを開発してきた歴史があるからです。
液晶は、固体と液体の中間の状態なので、この状態を幅広い温度帯でキープする必要があります。そこで融点と凝固点を-24度から28度の間で変えた材料を10種類以上開発してきました。
今回、熱中症予防のプレクーリングに使い適温蓄冷材の開発にも、この技術が生かされています。
2024年4月からは建設業でも残業時間規制が厳格化されます。また温暖化によって夏季の労働生産性は20%も低下するそうです。ITとプレクーリング、そして給水・塩分補給などによって、適切な熱中症予防を行っていきたいですね。