小型ドローンでタイル壁を「レーダー探傷」! JFE商事エレと大阪大学が内部空洞の超高速検出に成功
2023年12月8日

管理人のイエイリです。

集合住宅やオフィスビルの外壁点検では、従来の目視や打音検査のほか、ドローン(無人機)に搭載した高精度カメラや赤外線カメラによる調査が主流です。

しかし打音検査には足場をかける必要があり、赤外線カメラは日影部などでは使えないなど、一長一短がありました。

そこでJFE商事エレクトロニクス(本社:東京都千代田区)は、大阪大学大学院基礎工学研究科の永妻忠夫教授らと共同で、小型ドローンを使ってタイル壁面内部の空洞などをスピーディーに見つける非破壊検査技術を開発し、このほど実験に成功しました。

タイル壁面の非破壊検査に使用する小型ドローン。重量は1.4kg(以下の写真、資料:JFE商事エレクトロニクス)

タイル壁面の非破壊検査に使用する小型ドローン。重量は1.4kg(以下の写真、資料:JFE商事エレクトロニクス)

壁面検査に使うセンサーは、

ナ、ナ、ナ、ナント、

ミリ波レーダー

なのです。(JFE商事エレクトロニクスのプレスリリースはこちら

飛行しながらタイル壁面にミリ波レーダーを照射するドローン

飛行しながらタイル壁面にミリ波レーダーを照射するドローン

内部に空洞があるタイル壁の断面イメージ(左)とレーダーは解析で見える化された内部欠陥(右)

内部に空洞があるタイル壁の断面イメージ(左)とレーダーは解析で見える化された内部欠陥(右)

このレーダー検査技術は、物質に対して透過能力を持つマイクロ波やミリ波を使ったもので、2021年に1号機が発表され、煙突内部のライニング材の肉厚を非接触・非破壊で透視することに成功しました。

そして今回は、1300gあったミリ波レーダー部を435gまで軽量化しました。前回は重量6.3kgの大型ドローンが必要でしたが、機体重量1.4kgの小型ドローンで検査できるようにしました。

ドローンの小型化で、ローターによって発生する風の乱れが少なくなったため飛行が安定し、ミリ波レーダーのアンテナ部分を壁面から10~30cmまで近づけることができるようになりました。

レーダー自体も改良を加えて、地上の制御システムで発生させた光信号を、光ファイバーでドローンに伝送し、光電変換器によって周波数が4GHz~40GHzの範囲で高速に変化するレーダー波を作り出す技術を新たに開発しました。

全体システムのイメージ

全体システムのイメージ

その結果、1号機では測定箇所1点当たり数秒かかっていた測定時間を、1000分の1の

1ミリ秒に大幅短縮

することに成功したのです。

地上の制御システムとドローンは、光ファイバーケーブルと電気ケーブルでつながっており、ドローンの動力も有線で供給されます。

バッテリーの搭載が不要になったため、ドローンの負荷は大幅に減り、長時間、連続して飛行調査が行えます。

地上の制御システムとドローンは、光・電気のケーブルで接続されている。バッテリーが不要のため長時間の調査が行える

地上の制御システムとドローンは、光・電気のケーブルで接続されている。バッテリーが不要のため長時間の調査が行える

今回の実験は、国際電気通信基礎技術研究所(ATR。本社:京都府精華町)の大型電波暗室で行われました。GNSS(全地球測位システム)の電波が届かない環境のため、プロのパイロットによるマニュアル制御で飛行させました。

このレーダー検査装置を、自律飛行型ドローンや遠隔操作ロボットに搭載すれば、様々な構造物やインフラ設備の検査が、より簡単になりそうですね。

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