精度は実用レベル!東急建設、ヤマトがHoloLensで設備の墨出しに挑戦
2017年8月24日

管理人のイエイリです。

現実の風景に仮想の3Dモデルなどを重ねて見られるAR(拡張現実)用のデバイスとして、マイクロソフトのホログラフィックコンピューター「Microsoft HoloLens」が注目を集めています。

当ブログでもこれまで、東京大学構内のビル建設工事で現場にCAD図面などを表示する実験や、展示会用のブースの造作作業サイン張り付けなどの内装作業に使った例を紹介しました。

AR用ホログラフィックコンピューター「Microsoft HoloLens」(以下の写真:特記以外は家入龍太)

AR用ホログラフィックコンピューター「Microsoft HoloLens」(以下の写真:特記以外は家入龍太)

ヘルメットの下に装着したところ。屋外で使用するため自作のサンバイザーを着けている

ヘルメットの下に装着したところ。屋外で使用するため自作のサンバイザーを着けている

そして今回、東急建設ヤマトインフォマティクスは、さらに本格的な施工への応用にチャレンジしました。

2017年8月10日、東京都内のあるビル建設現場の屋外で、

ナ、ナ、ナ、ナント、

 

設備のインサートの墨出し

 

作業を、HoloLensで行ったのです。

設備の吊り材を固定するインサート

設備の吊り材を固定するインサート

HoloLensを使ってインサートの墨出し作業を行っているところ。メジャーは一切、使っていない

HoloLensを使ってインサートの墨出し作業を行っているところ。メジャーは一切、使っていない

インサートとは、設備をつり下げる部材を固定するため、床板コンクリート内に埋設するナットのような部品です。

これまでは、施工図と現場を見比べながら、基準線となる通り心などからメジャーで縦横の寸法を2回ずつ測り、埋設する位置に印を付けていました。つまり1つのインサートの墨出しを行うために5回の動作が必要だったわけです。

そこで、今回の実験では、設備用BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)ソフト「Rebro」で作成した詳細な設備BIMモデルを、インフォマティクスの「GyroEye Holo」というソフトを介してHoloLensにインプットし、現場とBIMモデル上のインサートをモニターで見ながら、現場の床面に直接、印を付けました。

HoloLensを着けて現場を見たところ。床板の下に取り付ける配管や吊り材、インサートなどの3Dモデルが見える。背景となっている現場の鋼床デッキプレートは、サンバイザーの効果で暗く見えている

HoloLensを着けて現場を見たところ。床板の下に取り付ける配管や吊り材、インサートなどの3Dモデルが見える。背景となっている現場の鋼床デッキプレートは、サンバイザーの効果で暗く見えている

斜めに見えていたインサートや吊り材を真上から見下ろす場所まで移動すると、そこが墨出し位置となる

斜めに見えていたインサートや吊り材を真上から見下ろす場所まで移動すると、そこが墨出し位置となる

HoloLensを使って墨出しを行うと、メジャーで測る作業がなくなったほか、施工図にもインサートの位置を表す寸法線を描かなくてもよくなりました。その結果、圧倒的な生産性向上が実現できることがわかりました。

インサートの取り付け位置は、鉄筋との干渉を避ける必要があったり、吊り材のたわみを利用したりするため、±2cm程度の誤差であれば許容範囲とのことです。

墨出しに使った3Dモデルから作られた図面。寸法線はかなり省略できる

墨出しに使った3Dモデルから作られた図面。寸法線はかなり省略できる

今回の実験では、一部のインサート部分に従来の方法によって墨出しを行い、それとの位置比較も行いましたが、

 

十分、実用に耐える精度

 

であることが確認できました。

鋼床デッキプレート上で印を付けているところ。青い十字印は、従来の方法で墨出しした位置だが、誤差はほとんどない

鋼床デッキプレート上で印を付けているところ。青い十字印は、従来の方法で墨出しした位置だが、誤差はほとんどない

また、精度を高めるために、現場の基準点となる「マーカー」は鉄板と磁石でしっかり固定できるようにし、ソフトにはマーカーのXYZ軸方向の回転角の誤差を、0.001度単位で補正する機能も組み込みました。これは回転による移動距離に換算すると、100m当たりわずか1.7mmになります。

現場の一角にしっかりと固定された原点表示用のマーカー

現場の一角にしっかりと固定された原点表示用のマーカー

今回の実験で、HoloLensは屋内現場だけでなく、屋外でも使えることがわかり、精度も実験のたびに向上してきました。

現場の技術者のアイデアによって、応用範囲は無限に広がりそうですね。

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