管理人のイエイリです。
3Dプリンターで実物の建物や構造物を建設する技術が世界各地で開発され、分譲住宅として販売される例も出てきました。
自由な形が造形できるのが3Dプリンターの特徴ですが、これまでは垂直で直線の壁など、従来の工法による建築物と同じような形のものが多く造られてきました。
こうした中、日本で初めて3Dプリンターによる住宅建設を目指して起業したスタートアップ企業、セレンディクスパートナーズ(本社:兵庫県西宮市)は、画期的な住宅の形状を編み出しました。
「Sphereプロトタイプデザイン」を呼ばれるその形は
ナ、ナ、ナ、ナント、
球形の住宅
なのです。(セレンディクスパートナーズのプレスリリースはこちら)
設計を担当したのは、米国ニューヨークにある建築設計事務所、CLOUDS AOの共同創業者、曽野正之氏で、このほど意匠法に基づく意匠出願を行いました。
球形のデザインにした理由は、構造的に最も強い形だからです。そのため、鉄筋などの構造体を使わず、3Dプリンターで効率的に住宅を造れます。
無筋コンクリートにすると、建築基準法をどうクリアするかが課題となりますが、建築面積を10平米未満にすることや、建物の上部を屋根として扱うことといった方法が考えられているようです。
住宅のコストは大半が人件費と物流費からなっています。3Dプリンターで現地施工することで、大幅な省人化が図れます。また、材料を液体のまま現場に輸送することで、輸送も効率的になり、物流費を抑えられます。
同社が目指す“価格破壊”は、
30坪で300万円
を実現することで、年齢や家族構成、仕事に合わせて、住宅もクルマのように買い替えられるようにすることを目指しています。
また、3Dプリンター自体も急速に現場での使い勝手が良くなってきました。
例えば、同社が導入を検討していると思われる米国・Apis Corの3Dプリンターは、以前は2トントラックで現場に搬入していたのでクレーンが必要でしたが、現在はクローラーで自走できるようになっています。
そのため、自らキャンピングカー程度のトレーラーに乗って、簡単にけん引移動できるようになりました。
また、3Dプリンターで造形すると、水平方向に深い層状の溝ができていましたが、今ではかなり平滑な壁面が造れるようになってきました。
セリンディクスパートナーズのCEOを務める小間裕康氏は、2010年に京都で設立された電気自動車のスタートアップ企業、GLMで代表取締役を務め、次世代EVスーパーカー「GLM G4」の事業などに携わった経験がある新進気鋭の経営者です。
他産業の経験を生かした、3Dプリンターによる次世代住宅メーカーの経営戦略は、建設DX(デジタルトランスフォーメーション)の実現に向けて、大きな刺激になりそうです。