モジュール建築の米・カテラ社が経営破綻! アフターコロナの“お手本”がなぜ
2021年6月11日

管理人のイエイリです。

今から約1年前の2020年6月24日に当ブログに掲載した「コロナ後の建設革新をマッキンゼーが予測!ゼネコンはもう、もうからない?」という記事は、いまだに多くのアクセスを集めており、ちょくちょく人気記事ランキングの欄にも顔を出します。

この記事は、米国の大手経営コンサルタント、マッキンゼーが公開した「建設業の次の普通(原題:”The next normal in construction”)」という英文レポートを紹介したものです。

その内容をざっくり言うと、「これからの建設業は、建物の部材を規格化した『モジュール』を工場で大量生産し、現場での作業は大幅に削減する方向に進むだろう」というものでした。

コロナ後の建設プロセスイメージ。4つのビル建設プロジェクトがあれば、部材を規格化したモジュールを工場で大量生産し、現場での作業は簡略化する方向に進むと予測(資料:Courtesy of McKinsey)

このビジネスモデルをそっくり先取りしていたのが、米国のシリコンバレーで2015年に創業したスタートアップ、カテラ(KATERRA。本社:カリフォルニア州メンローパーク)です。

建物の壁や床などの木製部材を工場で大量生産し、現場での作業を簡略化する同社の手法は、ウェブサイトのトップページに流れる動画を見ているだけでも理解できます。

マッキンゼーのレポートでも、KATERRAの取り組みについて「デザインや設計から、部材供給、工場生産までを含む建設プロセスを、デジタルプラットフォームで統合した」と、“お手本”のように取り上げられていました。

カテラのウェブサイトより。巨大な工場での自動化機械やロボットを使った部材生産から現場での設置まで、モジュール建築による建設プロセスがわかりやすく紹介されている(資料:Courtesy of KATERRA)

ところが、先日、衝撃のニュースが飛び込んできました。

ナ、ナ、ナ、ナント、

カテラが経営破綻

したというのです。

カテラの経営破綻を報じた「The Real Deal」の記事(資料:Courtesy of The Real Deal)

米国の「The Real Deal」が6月1日付けで報じた記事によると、カテラはその前週に従業員に対して事業の閉鎖を伝えたとのこと。

経営破綻に追い込まれた理由としては、コロナ禍や人件費、建設費の高騰、そして財政難があったとのこと。そして8000人もの従業員がいたそうです。

またBloombergの6月8日付けの記事によると、ソフトバンクグループはこれまで21億ドル(約2300億円)もの資金をカテラに出資しているそうです。

カテラのウェブサイトより。巨大な工場での自動化機械やロボットを使った部材生産から現場での設置まで、モジュール建築による建設プロセスがわかりやすく紹介されている(資料:Courtesy of KATERRA)

なぜ、アフターコロナの建設業として期待されていたカテラが経営破綻に追い込まれたのでしょうか。

カテラのウェブサイトLinkedInのページには詳しいことは書かれていません。

あくまでも推測の域を出ませんが、昨今の木材価格の高騰が、原料の入手難やコスト競争力の低下に悪影響を及ぼしたことは容易に想像できます。

また、コロナ禍によって工事の中止や延期による売り上げ減少の影響もあったでしょう。

そして、2015年に創業したにもかかわらず、従業員が8000人もいたということは、

事業拡大を急ぎすぎた

のかもしれません。

オールドエコノミーの代表格である建設業は、「じわじわ」と変化するものであり、いくら競争力があったとしても、新しい技術や建設プロセスが一気に従来の市場を席巻するのは難しいのかもしれません。

日本の建設業では、あまり起こらないような倒産劇ですが、コロナ後の建設DX(デジタルトランスフォーメーション)の進め方を考える上で、参考になる部分も多くありそうですね。

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