管理人のイエイリです。
2021年7月3日の午前10時半ごろ、静岡県熱海市の伊豆山地区で発生した土石流災害は、報道によれば6日までに7人の死者、27人の安否不明者、122戸の被災家屋を出す大災害となりました。亡くなられた方のご冥福をお祈りします。
こうした自然災害の場合、これまでは地質調査会社などがヘリコプターを飛ばして現地を調査し、かなり時間がたってから現場の状況がわかる、という流れが普通でした。
ところが、今回の土石流災害は、災害現場があっという間に現場が3Dモデル化され、救助作業や災害の原因究明などに役立てるという点が違いました。
それは、スピーディーなドローン(無人機)で撮影した高解像度の映像がネットで公開されたことと、写真や動画をコンピューターで解析して、3Dモデルを作成する「フォトグラメトリー」という手法が進化したおかげです。
例えば、事故翌日の7月4日には、ツイッターで龍 lilea氏が「現地の様子を3D化してみた」という動画付きの投稿を行いました。
いったい、この3Dモデルの“原料”はなにかというと、インターネットに公開された
テレビ静岡のニュース映像
だったのです。
7月4日にネットで公開されたテレビ静岡のニュースでは、約10分間にわたって静岡県が撮影したドローン映像を流しました。そのデータをもとに龍 lilea氏が3Dモデルを作成し、「立体化することで現場状況を分かりやすく安全に把握するのに役立たないだろうか」と、投稿したのです。
現場を様々な角度から検討できるので、こうした3Dモデルは救助や緊急対策工事などに大いに役立ちそうです。
一方、静岡県はG空間情報センターで、熱海市内の3次元点群データと、ドローンで撮影した4K画質の動画を公開しました。静岡県は2020年4月から「バーチャル静岡」として県内の高精度な3D点群データを公開しています。(詳しくは2020年5月7日付の当ブログ記事を参照)
こうした経緯もあって、今回の土石流災害もスピーディーなデータ公開が可能だったのです。
このデータを使って、いち早く、事故前後の3Dモデルを作成し、ツイッターで公開したのが、Symmetry Dimensions Inc.のCEO、沼倉正吾氏です。
動画を見ると、前後の現場が対比され、
崩壊前後の現場状況
がよく分かります。
また、ホロラボとアナザーブレインも、国土交通省が公開した日本の巨大3Dモデル「PLATEAU」と互換性のあるプラットフォーム「toMAP」上で、崩壊前後の現場の3Dモデルを公開しています。
こちらは、いろいろな視点や角度、拡大/縮小を行いながら現場の3Dモデルが見られるようになっています。
これまでは現場にいる人しか災害時に救助や復旧作業に携われませんでしたが、静岡県が高解像度のドローン映像をいち早く公開したことで、いろいろな技術者が3Dモデルやオルソ画像などを作成できました。
これらの3Dモデルはきっと、被災地で役立つに違いありません。