管理人のイエイリです。
清水建設は2020年から、日本建築センター(以下、BCJ)の協力を得て、BIMモデルを使った建築確認申請業務の効率化に取り組んでいます。
同年3月24日には、オートデスクのBIMソフト「Revit」のBIMモデルを使った建築確認申請の審査システムを開発したことを発表(2020年3月25日付けの当ブログ記事を参照)したほか、10月にはこのシステムを三愛会総合病院(埼玉県三郷市。地上7階、床面積1万7000m2、鉄骨造)に初めて適用し、確認済証を取得しました(2021年4月19日付けの当ブログ記事を参照)。
そして、両者の取り組みはさらに、着工後にBCJが行う中間検査へと前進し、その記者発表が2022年4月20日に開催されました。
BIMモデルを使って、中間検査を効率的に行うために、導入した新技術は、
ナ、ナ、ナ、ナント、
タブレットとAR
だったのです。
中間検査は、現場の柱や梁が設計通りの位置、寸法、仕様で施工されているかどうかを調べる必要があります。
そこで、BIMモデルをAR(拡張現実)で使えるようにするため、ゲームエンジンの「Unity Reflect」のデータに変換し、タブレットを使ったARができるようにしました。この検査ツールの開発は、積木製作(本社:東京都墨田区)が担当しました。
そして、サーバー上のARデータをリアルタイムに現場に伝送するシステムは、レスターコミュニケーションズ(本社:東京都品川区)が開発しました。
現場が設計通りにできているかどうかを確認するために、ARによって現場に重ねて表示できるものには、BIMモデルのほかCAD図面や、数十枚の写真から現場を3Dモデル化する「フォトグラメトリー」のモデル、またBIMモデルにひも付けられた図面や属性情報などがあります。
そして、このタブレットの画面やマイクで拾った音声などは、BCJのオフィスにもリアルタイム中継されて、
中間検査の遠隔臨場
も可能になったのです。
BCJからは、検査のために日本全国に出張しているとのことです。遠隔臨場が実用化されると、「移動のムダ」が減るとともに、働き方改革も実現できそうですね。
清水建設を含むスーバーゼネコン5社は先日、構造用のRevitファミリの仕様を統一しましたが、今回は設計図書へのリンクなど、若干、属性情報を追加した部分もあります。
清水建設では今回の中間検査で使った構造BIMの仕様を、将来、5社に提案することも検討しているとのことです。それが実現すれば、今回のAR検査システムが、他社でも使いやすくなりそうですね。
また、建築確認申請で使用する「法適合判定プログラム」も新機能が続々と開発され、当初、予定した17ツールすべてが完成しました。
そしてBIMを使った建築確認申請を行った「北國新聞社美川制作センター」でも、2022年2月25日2件目となる確認済証を受領しました。
同社は建築の意匠や設備・電気が主な対象となる完了検査用のシステムも鋭意、開発中です。スマートフォンを使った点群計測などの技術も投入されそうです。今後の進化からも、目が離せませんね。