管理人のイエイリです。
設備工事大手の高砂熱学工業は、埼玉県八潮市に「T-Base」という施設を建設し、2022年5月10日に開所式を行いました。
開所式には同社 代表取締役社長COOの小島和人氏や役員、協力会社の団体「高和会」の役員など、同社関係の重要メンバー約20人が出席しました。
この施設が建設された目的は、
ナ、ナ、ナ、ナント、
施工プロセスの変革
なのです。(高砂熱学工業のプレスリリースはこちら)
この施設には、設備工事の企画から生産、物流までの機能が集約されています。地上2階建てで延べ床面積は4681m2。内部には生産・物流エリアやストックヤード、執務室・会議室、セミナーホール、展示エリアを備えています。
これまでの工事は、現場で配管やダクト、機器などを一つ一つつなぎ、現場ごとに施工管理を行うという、手間ひまのかかる方法で行ってきました。
そこで「T-Base」をプラットフォームとした、セントラル生産システムへの変革し、現場の負荷低減と高品質な施工を両立させ、生産性の向上を図ろうというのです。
T-Baseではモジュール化された標準部材を効率的に生産し、全国の各現場に配送します。このほか標準化技術の開発や新技術の教育・育成、バリアフリー環境による多様な人材活用の機能も担います。
つまり、建設生産の場を、手作業中心の現場から、機械加工中心の工場へとシフトしようというわけですね。すると現場での作業はこれまでよりも省力化・省人化されることになります。
また、物流もシンプルになります。これまでは、取引先の協力会社や工場、材料メーカーなどから各現場にそれぞれ配送していましたが、今後は「T-Base」を中継するので物流もシンプルになり、トラックの効率的な利用にもつながりそうです。
という戦略を聞いて、2020年6月24日付けの当ブログに掲載した「コロナ後の建設革新をマッキンゼーが予測!ゼネコンはもう、もうからない?」という記事が脳裏をよぎりました。
米国の大手経営コンサルタント、マッキンゼー(McKinsey & Company, Inc)が同月に公開した「建設業の次の普通(原題:”The next normal in construction”)」という英文レポートを紹介したものです。
同レポートでは、建設業の生産性が高まらない原因は「一品生産」のワークフローにあり、これを工業製品のように
標準化・モジュール化
し、計画的な生産・物流体制によって効率的なワークフローにする必要があると、していたのです。
今回、高砂熱学工業が開設した「T-Base」は、まさにこの戦略にのっとった生産性向上策と言っても過言ではないでしょう。
同レポートでは、建設業が製造業のようになることで、「付加価値」が発生する部分は建設業から工場にシフトする、言い換えればゼネコンやサブコンは儲からなくなると、ちょっと心配なことも指摘していました。
その点、高砂熱学工業では自社工場の「T-Base」を開設したので、工場部分の付加価値もしっかり自社に取り込んだというわけですね。
同社では今後、「T-Base」とBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の連携も進めていく方針です。これからの建設業を先取りする取り組みには、業界内外からの注目が集まりそうです。