高砂熱学のプレハブ拠点はマッキンゼーを超えていた! ユニット化、省加工、軽い資材で働き方改革も実現
2022年6月29日

管理人のイエイリです。

高砂熱学工業はこのほど、埼玉県八潮市に同社のプレハブ生産拠点「T-Base」をオープンしました。(2022年5月13日付けの当ブログ記事を参照

空調設備の細かい配管や部材の加工を工場で行って「ユニット」を生産し、現場での作業などを減らすことで生産性向上と働き方改革を実現する取り組みです。

いったい、その内部はどうなっているのかと思っていたところ、昨日(2022年6月28日)、報道陣などに公開されました。

高砂熱学工業がオープンしたプレハブ生産拠点「T-Base」(以下の写真:家入龍太)

高砂熱学工業がオープンしたプレハブ生産拠点「T-Base」(以下の写真:家入龍太)

施設の公開に先立ち、あいさつする高砂熱学工業代表取締役社長COOの小島和人氏(中央)

施設の公開に先立ち、あいさつする高砂熱学工業代表取締役社長COOの小島和人氏(中央)

梅雨明け後の八潮市は、カンカン照りの天気で気温30度を超えていましたが、「T-Base」の内部では、

ナ、ナ、ナ、ナント、

空調が工場全体

に施され、快適な環境での作業が行われていたのです。

快適な環境の下、無理のない姿勢で設備の組み立てを行う作業員たち

快適な環境の下、無理のない姿勢で設備の組み立てを行う作業員たち

「T-Base」の各所には、工場内の低い部分だけに冷気で満たす特殊な空調機が配置されている

「T-Base」の各所には、工場内の低い部分だけに冷気で満たす特殊な空調機が配置されている

空調機は、工場の低い部分だけに冷気を送る仕組みで、快適さと省エネ性を両立させています。

また空調設備の冷媒管には、従来の銅管に代えてアルミニウム管を使用して、大幅な軽量化を図っています。また、現場までたたんで運べる段ボール製のダクトの活用例も工場内に設けてあり、多様な材料の活用にも取り組んでいます。

従来の銅管(左)に比べてアルミ管(右)を使った冷媒管はとても軽いです

従来の銅管(左)に比べてアルミ管(右)を使った冷媒管はとても軽いです

段ボール製ダクト(左)と従来の丸ダクト(右)の設置例。段ボール製は保温も不要なのでコンパクトに設置でき、現場までたたんで運べる

段ボール製ダクト(左)と従来の丸ダクト(右)の設置例。段ボール製は保温も不要なのでコンパクトに設置でき、現場までたたんで運べる

建設現場で混合廃棄物として産廃処理されがちな梱包(こんぽう)材などは、工場内のボックスに分別され、リサイクルが行われていました。現場で使用したカラーコーンやバリケードの部材も回収し、他の現場で「リユース」や「リサイクル」するコーナーもありました。

梱包材や断熱材などは、分別箱を設けて徹底的にリサイクル

梱包材や断熱材などは、分別箱を設けて徹底的にリサイクル

現場で使用したカラーコーンなどのうち、状態のよいものは他の現場に送って「リユース」する

現場で使用したカラーコーンなどのうち、状態のよいものは他の現場に送って「リユース」する

設備をユニット化する上で、省施工の工夫も見られました。これまで現場ではダクトなどを吊り下げるのに、「寸切り」と呼ばれるネジを切った棒がよく使われてきましたが、それを1本の鋼管サポート材に置き換えたのです。

その結果、上スラブに埋め込むインサートというボルトの間隔が短くなり、墨出しや設置が楽になったほか、これまで使えなかった設備の上部空間を有効利用できるようになりました。

従来の寸切りに代わる鋼管サポート材

従来の寸切りに代わる鋼管サポート材

従来の寸切りによるサポート(左)はデッドスペースが生まれるが、鋼管サポート材(右)は上部空間を配管や配線の空間などとして有効利用できる

従来の寸切りによるサポート(左)はデッドスペースが生まれるが、鋼管サポート材(右)は上部空間を配管や配線の空間などとして有効利用できる

このほか、工場で加工された部材などを現場に運ぶ物流もユニット化されていました。

空調設備はダクトやダンパー、断熱材など様々な資材で構成されますが、現場では1つでも資材が見つからないと作業が行えないので、部材を探す時間が「手待ちのムダ」になっていたのです。

そこで、作業場所別に使用する資材を、梱包材を外した状態で1つの台車にまとめて配送する「アソート」という台車も使われています。アソートによる配送を試行した現場からは、大好評の声が上がっているようです。

「アソート」による部材のまとめ配送を説明する小島社長。ご自分もかつて現場で苦労した経験があり、その説明には実感がこもっていた

「アソート」による部材のまとめ配送を説明する小島社長。ご自分もかつて現場で苦労した経験があり、その説明には実感がこもっていた

工場で材料を加工してユニットやモジュールを製造し、現場に運んで組み立てるというプレハブ生産方式というと、2020年6月に、米国の大手経営コンサルタント、マッキンゼー(McKinsey
& Company, Inc)が公開した「建設業の次の普通(原題:”The next normal in construction”)」という英文レポートを思い出す方もおられるでしょう。(2022年6月24日付けの当ブログ参照

ところが、高砂熱学は数年前から独自で人手不足や労働時間短縮などの課題解決に取り組む中で、「T-Base」を建設する計画を進めていたため、

マッキンゼーを超えた

取り組みだったのです。

T-Baseの機能。標準化部材を工場生産し、全国の現場に配送する物流基地となる(資料:高砂熱学工業)

T-Baseの機能。標準化部材を工場生産し、全国の現場に配送する物流基地となる(資料:高砂熱学工業)

工事現場ではいまだに仮設足場や高所作業車などを使って、鉄筋や合板などの素材を一つ一つ、人間が加工する作業が行われていますが、今後は生産機械や空調が整った工場でユニットを生産し、それを現場で組み立てる方式が増えてくると思われます。

ちなみに同社は今後、T-Baseや各地の工場によるプレハブ化を本格稼働されることで、2020年度に比べて2030年度は20%、2040年度は30%の生産性向上を目指しているそうです。

高砂熱学の「T-Base」プラットフォームは、未来の建設業も先取りしているようですね。

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