管理人のイエイリです。
山岳トンネル工事で使われる建設機械のうち、主役となるのがドリルジャンボです。
がっしりした車体の前方に、油圧で動くアームを数本備えて、発破用の爆薬を装塡(そうてん)する孔や、周辺地山を補強するロックボルト用孔の掘削など、様々な場面で使われます。
その運転には、削孔時の振動や音から地山の状況を体感しながら行う必要があるため、ベテランの「KKD(経験・勘・度胸)」が欠かせません。
一方、「切羽」と呼ばれる掘削最前線行う作業のため、岩が落下してくる「肌落ち」による危険などもあり、できるだけ離れて作業した方が安全という面もあります。
そこで西松建設は、ジオマシンエンジニアリング(本社:東京都荒川区)、カナモト(本社:北海道札幌市)、古河ロックドリル(本社:東京都千代田区)と共同で、「Tunnel RemOS-Jumbo(トンネルリモスジャンボ)」を開発しました。
ナ、ナ、ナ、ナント、
ドリルジャンボを遠隔操作
するシステムなのです。(西松建設のプレスリリースはこちら)
このシステムは、古河ロックドリルが2020年に発売した全自動ドリルジャンボ「J32RX-Hi ROBOROCK」をもとに開発されました。
ドリルジャンボの機体には、遠隔操作室からの操作信号に基づいて機体を制御するための機体制御盤や、機体の周囲や切羽を映すための複数のフルHD カメラを搭載しています。
切羽から離れた場所にある遠隔操作室には、走行のためのレバーやペダル、削孔のための操作盤を備えたコックピットや、現場の映像を見られるモニターが設置されており、切羽近くの作業状況動画や音、振動を体感することができます。
そのため、実機に乗っているのに近い感覚、でドリルジャンボを遠隔操作することができます。また、遠隔操作室内の設定を切り替えることで、共通の設備を用いて他の重機も遠隔操作できます。
ドリルジャンボの削孔作業などで取得した各種データは、無線通信設備によって伝送・収集し、地山評価や将来の自律施工に活用することができます。
まさに、KKDとデータドリブンを合体した、新しい時代の遠隔操作システムと言えるでしょう。
西松建設は最近、山岳トンネルの無人化施工に関する技術開発を急ピッチで進めています。
例えば、2022年4月8日には、トンネル底面の掘削形状を、高速3Dスキャナーを使って安全かつスピーディーに計測する「インバート掘削形状モニタリングシステム」を発表しました。
これまで目視で行っていた「インバート」と呼ばれるトンネル底面の形状計測を、スキャナーによって±20~30mmの精度で計測できるようになったため、余掘りや余巻きのムダが減り、作業の安全性も高まりました。
また、2022年4月21日には、岐阜工業(本社:岐阜県瑞穂市)と共同で、覆工コンクリートを打設するアーチセントルを自動化した「自動化セントル」を発表し、制御盤のボタン操作だけでセントルのセットから覆工コンクリートの打設、脱型・移動などを行えるようにしました。(西松建設のプレスリリースはこちら)
このほか、当ブログでも山岳トンネル掘削作業の遠隔化(2022年3月18日の記事参照)や掘削データの3D化(2022年2月3日の記事参照)、ホイールローダーの遠隔操作(2021年10月11日の記事参照)、切羽計測のテレワーク化(2021年5月26日の記事参照)など、西松建設の山岳トンネル技術の自動化について報じてきました。
その背景には、西松建設が2027年までに、山岳トンネルの無人化施工を実現することを目指していることがあります。
そして、各技術については、
2023年までに実証試験
を完了させる計画なのです。
今回、開発したドリルジャンボ遠隔操作システム「Tunnel RemOS–Jumbo」は、「Tunnel RemOS-WL」、「Tunnel RemOS-Meas.」、「Tunnel RemOS-Lining」、「TunnelRemOS–RH」に続く5つめの要素技術となります。
山岳トンネル工事と言えば、「KKD」の代表格でしたが、気がつけば無人化施工の実現に一番近い工種になってきたようです。西松建設が取り組む山岳トンネルDX(デジタル・トランスフォーメーション)に、注目していきたいですね。