管理人のイエイリです。
街中で行われる建設工事では、工事によって発生する様々な振動の大きさや影響範囲を把握し、周辺住民に不安を与えないようにすることが求められます。
これまでは、現場外に複数の振動計を設置し、人手による巡回計測を行うのが一般的でした。しかし、リアルタイムに広い範囲の振動を把握したり、即座に対応したりするには限界がありました。
そこで日本電気(本社:東京都港区、以下「NEC」)、鹿島建設(本社:東京都港区、 以下「鹿島」)、東日本電信電話(本社:東京都新宿区、以下「NTT東日本」)は、
ナ、ナ、ナ、ナント、
電柱と光ファイバー
を使って、トンネル掘削工事の振動検知を行う実証実験に、世界で初めて成功したのです。(鹿島のプレスリリースはこちら)
工事の振動によって各電柱の上部が揺れると、電柱間に張り渡されている通信用光ファイバーが変位します。
その状況を光ファイバーの端に取り付けたセンシング装置によって観測することで、各電柱の振動の大きさを求めるというものです。
振動計測には、未使用の稼働していない光ファイバー芯線を使いました。
この方法で2022年1月~2023年6月まで計測した振動から、工事に起因する振動を抽出する処理を行った結果、トンネル掘削工事による振動の影響範囲を、
常時、面的に可視化
することに成功しました。
上のグラフは、施工時(赤色)と施工停止時(緑色)の振動レベルの分布をセンシング装置からの距離でグラフ化したものです。トンネル掘削現場と重なる、右端約80mの区間の振動レベルが高くなっていることがわかります。
この技術は、街中に張り巡らされている通信用光ファイバーを振動センサーとして活用し、センシング装置を接続した光ファイバーの全長にわたって振動分布を計測できます。
また、人手を介さずに24時間、365日モニタリングでき、工事に由来する振動だけをリアルタイムに抽出して地図上にマッピングできます。
日ごろ、やっかいもの扱いされがちな電柱や電線ですが、街中の振動センサーとして活用できるとは驚きました。
なお、鹿島の光ファイバーを使った構造物の様々な計測技術には定評があります。
例えば、高架橋などに使われるPC(プレストレストコンクリート)ケーブルの張力計測(2016年10月31日の当ブログ参照)や、法面補強に使うグラウンドアンカーの張力測定(2022年8月25日の当ブログ参照)、ダムコンクリートの反り上がり計測(2023年2月9日の当ブログ参照)などです。
今回の実験成功で、その活用範囲がまたも広がりました。