2016年の熊本地震で発生した南阿蘇村の土砂崩れでは、土中に埋まった自動車を探す必要がありましたが、二次災害の危険もあるため、立ち入りが難しい状況での探査作業が難しかったことが思い出されます。
国土交通省によると、2016年は1492件の土砂災害が発生しており、今後も迅速な人命救助のため埋没車両の探査が必要になることが予想されます。
そこで新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はエンルート、産業技術総合研究所、日立製作所、八千代エンジニヤリングとともに、埋没車両を空中から探すシステムを開発し、探知実験に成功しました。
ナ、ナ、ナ、ナント、
ドローンに探査センサー
をつり下げて現場上空を飛行することで、電磁探査によって埋没車両の位置を特定できるのです。
地下磁気探査センサーは長さ1.6m、総重量4.5kgと大きなもので、位置情報収集用のGPS受信器やセンサー制御と計測データモニタリング用の無線通信装置、対地高度を測る超音波距離センサーが搭載されています。
これをつり下げて飛行するドローンは、最大積載可能重量が6.6kgもあるエンルートが開発したマルチコプター「ZION CH940」が使われました。
また、地下の微妙な磁気変化を検知するため、センサーは磁気ノイズを発生するドローン本体から4mほど離すとともに、地表の小さな突起や地盤の導電性による誤検知を防ぐために、地上から1m程度の高さに保つ必要があります。
そこで、センサーは飛行中に回転しないように“尾翼”を付け、対地高度が70cm以上のデータだけを採用するようにしました。
飛行中の探査データは、無線装置によってリアルタイムに地上に伝送され、航空写真と重ねて表示しながら埋没車両の位置を現場で特定できます。
実験ではまず、約70×35mの実験場全体を測定しましたが、以前から地下に残されていた残留構造物は検知できたものの、車両は浅い方(深さ1.5m)がわずかに検知できた程度でした。
そこで、今度は浅い埋没車両の周辺を密に飛行して調べたところ、
深い方の車両も検知成功
となったのです。
NEDOなどは今後、起伏の大きな地形で実証実験を行い、システムの改良を継続するとともに、この技術を民間企業などに提供して実用化を促進したいと考えています。
ドローンの強みは、人が立ち入れない場所でも、センサーを搭載して飛行し、データを集められることですね。
ドローンでこうした低い高度から現場に近づき、リモートセンシング技術で埋没車両を探せるようになったとは、技術の進化に驚くばかりです。