管理人のイエイリです。
高砂熱学工業はこのほど、埼玉県八潮市に同社のプレハブ生産拠点「T-Base」をオープンしました。(2022年5月13日付けの当ブログ記事を参照)
空調設備の細かい配管や部材の加工を工場で行って「ユニット」を生産し、現場での作業などを減らすことで生産性向上と働き方改革を実現する取り組みです。
いったい、その内部はどうなっているのかと思っていたところ、昨日(2022年6月28日)、報道陣などに公開されました。
梅雨明け後の八潮市は、カンカン照りの天気で気温30度を超えていましたが、「T-Base」の内部では、
ナ、ナ、ナ、ナント、
空調が工場全体
に施され、快適な環境での作業が行われていたのです。
空調機は、工場の低い部分だけに冷気を送る仕組みで、快適さと省エネ性を両立させています。
また空調設備の冷媒管には、従来の銅管に代えてアルミニウム管を使用して、大幅な軽量化を図っています。また、現場までたたんで運べる段ボール製のダクトの活用例も工場内に設けてあり、多様な材料の活用にも取り組んでいます。
建設現場で混合廃棄物として産廃処理されがちな梱包(こんぽう)材などは、工場内のボックスに分別され、リサイクルが行われていました。現場で使用したカラーコーンやバリケードの部材も回収し、他の現場で「リユース」や「リサイクル」するコーナーもありました。
設備をユニット化する上で、省施工の工夫も見られました。これまで現場ではダクトなどを吊り下げるのに、「寸切り」と呼ばれるネジを切った棒がよく使われてきましたが、それを1本の鋼管サポート材に置き換えたのです。
その結果、上スラブに埋め込むインサートというボルトの間隔が短くなり、墨出しや設置が楽になったほか、これまで使えなかった設備の上部空間を有効利用できるようになりました。
このほか、工場で加工された部材などを現場に運ぶ物流もユニット化されていました。
空調設備はダクトやダンパー、断熱材など様々な資材で構成されますが、現場では1つでも資材が見つからないと作業が行えないので、部材を探す時間が「手待ちのムダ」になっていたのです。
そこで、作業場所別に使用する資材を、梱包材を外した状態で1つの台車にまとめて配送する「アソート」という台車も使われています。アソートによる配送を試行した現場からは、大好評の声が上がっているようです。
工場で材料を加工してユニットやモジュールを製造し、現場に運んで組み立てるというプレハブ生産方式というと、2020年6月に、米国の大手経営コンサルタント、マッキンゼー(McKinsey
& Company, Inc)が公開した「建設業の次の普通(原題:”The next normal in construction”)」という英文レポートを思い出す方もおられるでしょう。(2022年6月24日付けの当ブログ参照)
ところが、高砂熱学は数年前から独自で人手不足や労働時間短縮などの課題解決に取り組む中で、「T-Base」を建設する計画を進めていたため、
マッキンゼーを超えた
取り組みだったのです。
工事現場ではいまだに仮設足場や高所作業車などを使って、鉄筋や合板などの素材を一つ一つ、人間が加工する作業が行われていますが、今後は生産機械や空調が整った工場でユニットを生産し、それを現場で組み立てる方式が増えてくると思われます。
ちなみに同社は今後、T-Baseや各地の工場によるプレハブ化を本格稼働されることで、2020年度に比べて2030年度は20%、2040年度は30%の生産性向上を目指しているそうです。
高砂熱学の「T-Base」プラットフォームは、未来の建設業も先取りしているようですね。