管理人のイエイリです。
2017年10月10日、シンガポールで、インフラをテーマにしたイベント「イヤー・オブ・インフラストラクチャー2017(YII2017)」(主催:ベントレー・システムズ)が開幕しました。
今回の大きなテーマは、なんと言っても「リアリティー・モデリング」です。ドローンで空撮した写真や3Dレーザースキャナーなどで計測した点群データから、実物の構造物や地形、街並みなどを忠実に3Dモデル化する技術です。
日本の建設業界でも、国土交通省のi-Constructionによってドローン空撮で作った3Dモデルを切り土・盛り土工事の土量計算や出来形管理などに広く活用しています。これもリアリティー・モデリングの活用の一環です。
土木だけでなく、建築やプラント、メンテナンスなど幅広い業界のユーザーが参加するYII2017では、リアリティー・モデリングの新たな活用方法の数々が報告されています。
地表や構造物のリアリティー・モデリングを行っても、そこにあるものが何なのかを判断するのは、これまで人間が行ってきました。この作業を自動化するのに、
ナ、ナ、ナ、ナント、
AIが導入され始めた
のです。
例えば、ベントレー・システムズのCEO、グレッグ・ベントレー(Greg Bentley)氏が行った基調講演では、地表の3Dモデルから道路や植栽をAI(人工知能)によって見分け、属性情報をつけるシステムが報告されました。
また、空撮写真から作った鉄塔の3Dモデルから錆(さび)の部分を見分けてマーキングするシステムも開発されています。
街並み全体のリアリティー・モデリングは、さらに地下の埋設管や構造物も一体化する取り組みが行われています。
例えば、ペンシルベニア州立大学は、セスナ機によって2時間にわたって空撮した約2400枚の写真からキャンパス全体の3Dモデルを作りました。今後はこのモデルに埋設管なども組み合わせていく予定です。
また、香港のCEDD-AECOM社は、40ヘクタールの造成工事現場を定期的にドローンによって空撮し、3Dモデルを作りました。
切り土・盛り土の土量管理や完成予想図の作成などにももちろん利用しましたが、細かいところでは現場内で作業が予定されている場所に工事用道路が通っていた場合、ダンプトラックなどが問題なく通れるように勾配や曲率を考慮して道路をスピーディーに付け替えることにも役立てていました。
その他、ヘルシンキ市は昨年、作成した市内全体の3Dモデルを使って、リアルな洪水シミュレーションを行っています。
リアリティー・モデリングの目指すところは、ペンシルベニア州立大学の ジョン・メスナー(John Messner)教授が語るように、実際の現場や施設を形だけでなく、リアルタイムな水道使用量などのデータを組み合わせた
デジタルツイン
つまり、“電子的な双子”をコンピューター上に構築することにあるようです。
デジタルツインと言えば、IoT(モノのインターネット)でよく使われる言葉です。つまり、ドローンによる空撮→3Dモデル→IoTという流れの中に今、建設業界はあると言えそうですね。