管理人のイエイリです。
3次元的に入り組んだ鉄筋や型枠の形を、平面図や立面図、断面図など図面から正確に理解するのは、初心者にとって難しいものです。
例えば、下の図面から、どんな鉄筋が組み上がるのか、想像してみてください。あなたはわかりましたか。
そこで、職業能力開発総合大学校で鉄筋工や型枠工などの職業訓練に携わる西澤秀喜准教授らは、図面からどんな鉄筋や型枠ができるのかを手軽に確かめられる施工実習用の教材「職業大AR配筋図アプリ」を開発しました。
図面にタブレット端末やスマートフォンをかざすだけで、
ナ、ナ、ナ、ナント、
3D鉄筋が立ち上がる
のです。
タブレットを持って机上の図面の周囲を回ると、3Dモデルも図面に連動して回ります。
また、実習現場でコンクリート打設が終了した基礎梁に、タブレットを向けると基礎梁上にこれから組み立てる鉄筋が3Dイメージで表示されます。
つまり、AR(拡張現実)の技術を使って紙の図面や実習現場という現実の世界に、鉄筋の仮想3Dモデルを重ね合わせて表示しているのです。
ARというと、現実の世界と仮想の3Dモデルの位置や四角、大きさを合わせて表示するために「マーカー」という目印が必要になります。
このシステムでは、図面に書かれた図形の一部をマーカーとして利用するので、特にマーカーらしいものは必要ありません。
また、実習現場ではGPS(全地球測位システム)の位置情報をマーカーとして利用しています。
この教材は、プラージュの「ARcube」(iOS版、Android版)をもとに開発されました。実習現場用のシステムは、グレープシティのwikitubeを使って専用アプリを開発したそうです。
西澤教授らの施工教育用教材開発は、これだけにとどまりません。鉄筋や住宅基礎、柱と梁の接合部などの作り方を
3D施工手順や動画
で解説する教材も開発したのです。
これらの3D施工手順や動画も、図面上の図形がマーカーとなり、それをタブレットやスマホが認識すると画面に現れる仕組みです。
2Dの図面と3Dの鉄筋イメージや施工手順を何度も見比べることで、図面を読み解く力だけでなく、どんな順番でものを作っていけばいいのかを想像する力がスピーディーに養われそうですね。
そして、AR育ちの若い職人さんたちは、施工現場に3DやARなどをどんどん持ち込み、ベテランを上回る生産性を発揮するかもしれません。そんな未来の現場が、楽しみですね。
「職業大AR配筋図アプリ」については、2018年9月4日~6日、東北大学川内北キャンパスで開催される「日本建築学会大会[東北]」で発表される予定です。ご興味のある方は、どうぞ。