管理人のイエイリです。
地方自治体などが都市や地形の3Dデータをオープンソース化し、無料公開する例が増えていますが、その“大本山”とも言えるのが、国土交通省が開発し2021年3月に公開した3D都市モデル「PLATEAU」です。
全国56都市の3D都市モデルを整備し、「G空間情報センター」を通じて高精細なデータを無料公開するとともに、データ仕様の規格や様々な活用例をマニュアルとして公開しました。(詳しくは、2021年3月29日付けの当ブログを参照)
また、ハッカソンや講演などのイベントで積極的にデータ活用を呼びかけるPR活動にも力を入れており、その活動自体の“オシャレさ”が評価され、2021年度の「グッドデザイン賞金賞」を受賞するなど、国交省のプロジェクトとしては異彩を放っています。(詳しくは、2021年10月22日付けの当ブログを参照)
このほど、国交省はPLATEAUに関して、(1)データ整備の効率化・高度化、(2)先進的なユースケース開発、(3)データ・カバレッジの拡大、を3本柱とする2022年度の取り組みを発表しました。(国交省のプレスリリースはこちら)
まず、注目したいのは「PLATEAU標準」と呼ばれる都市モデルの仕様を拡張することです。その結果、
ナ、ナ、ナ、ナント、
土木構造物や点群
のほか、水面や動的データなどの新たなオブジェクトも、PLATEAUに取り込めるようになるのです。
最近、はやりのスマホ点群などがPLATEAUにアップできるようになると、都市のデジタルツインがますます有効に使えそうですね。
もう一つ、注目したいのは、「LOD2」と呼ばれるテクスチャー付きのリアルな建物モデルを自動作成する取り組みです。「LOD2」モデル作成は手間がかかるので、2021年に公開されたPLATEAUの街並みは、東京駅周辺など一部を除くと「LOD1」と呼ばれる白いマッチ箱のような建物が主流でした。
そこで2022年度はAIを使ってLOD2モデルを自動作成するプログラムを開発し、オープンソースとして一般提供することを計画しています。これでLOD2モデルが量産されると、各地の3Dモデルが続々とリアルになっていきそうですね。
このほか、PLATEAUの都市データの利用やデータ登録をスムーズに行うために、ビューワーの機能追加や、UnityやUnreal Engineなどのゲームエンジン向けのSDKの開発も行われます。
(2)先進的なユースケース開発では、民間のパワーが大きく発揮されそうです。防災やまちづくり、環境エネルギー、モビリティーやロボティクスなどを対象として、「社会課題解決型」には25件、「民間サービス創出型」には16件のプロジェクトが採択されています。(詳しくは、国交省の資料を参照)
社会課題解決型には3Dデータを用いた浸水シミュレーションや、災害時に発生するがれきなどの廃棄物量シミュレーション、ヒートアイランドシミュレーションなど、都市の3Dモデルを有効に活用したプロジェクトがそろっています。
また、民間サービス創出型では、土石流などの災害時にもともとあった住居の位置などをAR(拡張現実)で現場で見られるシステムや、AR広告の効果解析シミュレーション、建物の未消化容積率の可視化システムなどがあります。
都市の3Dモデルを作るのは、それなりの費用がかかるので地方自治体では、どのようにその資金を確保するのかも課題になります。
そこで、このほど「都市空間情報デジタル基盤構築支援事業」が創設され、全国の地方公共団体が3D都市モデルを整備・活用・オープンデータ化する際に、補助を受けられるようになりました。
初年度となる2022年度は、全国37の地方公共団体の
約60都市が3Dモデル化
される予定です。
3D都市モデルの大本山であるPLATEAUがますます進化することで、地方自治体や企業でのデジタルツイン化の取り組みも進んで行きそうですね。