管理人のイエイリです。
国土交通省は2016年度からドローン(無人機)やICT建機などを活用し、建設現場の生産性向上を図る「i-Construction」を推進しています。
その優れた取り組みである「ベストプラクティス」を表彰する平成30年度「i-Construction大賞」の受賞者が昨日(2018年12月25日)、発表されました。(国土交通省のプレスリリースはこちら)
国交省から思わぬ“クリスマスプレゼント”を受け取ったのは、計25団体です。その内訳は、同省の直轄工事/業務部門が14、地方公共団体などの工事/業務部門が6、そしてi-Construction推進コンソーシアム会員部門が5となっており、それぞれの部門で国土交通大臣賞が1団体ずつに贈られました。
第2回を迎えた「i-Con大賞」を受賞した現場は、一段と創意工夫が感じられるものばかりです。大臣賞の受賞現場を中心にご紹介しましょう。
まず、直轄部門の大臣賞を受賞したのは加藤組(本社:広島県三次市)です。受賞対象となったのは「国道54号下布野歩道工事」で、いったい、どんな施工が行われたのかと思って資料を見たところ、
ナ、ナ、ナ、ナント、
ミニショベルによる極小工事
だったのです。
この現場で使われたミニショベルには、チルト機能付きの排土板が装着されており、ブルドーザーとしても機能します。
この排土板用にICT土工用の機器を取り付けて、全国初の「3Dガイダンスミニショベル」を誕生させ、現場の生産性向上に成功したことが評価されました。
この工事の経験から、建機メーカーが3Dマシンコントロール機能付きのミニショベルシステムを発表するに至ったそうです。
ICT土工は数万立米の規模がないとペイしないと思いがちですが、身近にある小さな現場の生産性向上に役立つことが証明されたことは、大きな意義があったと思います。
このほか、直轄部門では建築のBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)にも優秀賞が送られました。
「経済産業省総合庁舎別館改修(16)機械設備その他工事」を施工した高砂熱学工業(本社:東京都新宿区)で、空調機の更新でBIMを活用した3D施工図を作成し、VR(バーチャルリアリティー)を使って詳細な施工手順やメンテナンス性を確認し、改修工事でも手戻り防止や品質確保にBIMが有効であることを実証しました。
続いて、地方公共団体部門の大臣賞に輝いたのは、田中産業(本社:新潟県上越市)で、「一般国道253号(三和安塚道路)本郷サーチャージ盛土(その2)工事」が受賞対象になりました。
工夫のポイントは、ICTバックホーを使って、盛り土を行う際に締め固め1層ごとの「まき出し厚」を管理したことです。盛り土する部分にところどころ、まき出し厚の高さで小山を作り、これを目印にしてブルドーザーがまき出しを行いました。
ICTバックホーはもともと、盛り土の法面仕上げに使うものでしたが、層厚管理にも転用するというアイデアは素晴らしいですね。なお、この現場では盛り土の仮設搬入路の計画に3Dデータを活用し、効率的な施工も行いました。
I-Construction推進コンソーシアム会員部門では、i-Con技術の普及に貢献した企業や団体が表彰されました。大臣賞は政工務店(本社:佐賀県小城市)のiCT事業部です。
従業員65人の知事許可の建設会社ですが、毎年、ICT建機を増設し、使用できるオペレーターも教育していた結果、現在は
18台のICT建機を保有
するに至りました。
そして3D測量も導入し、i-Constructionの技術を自社に蓄積した結果、2017年度は3D測量やICT施工を20件も実施し、生産性を3割向上させたそうです。また、発注者や関連企業への講習会なども行い、情報化施工の有用性を広めたことも評価されました。
同社では、国交省が2025年に目指す「2割の生産性向上」を、すでに実現してしまったようですね。
このほか、特筆すべきは2007年から土木分野での3Dモデル活用を目的に活動きた「Civilユーザ会」のBIM/CIMへの取り組みが優秀賞を受賞したことです。
業界を超えてユーザー有志が集まり、地道に勉強会や講習会を開催しながら、BIM/CIMの最新技術や国交省の動向、ユーザーの課題を出し合って全員の知恵を結集して課題解決に取り組んできたことが評価されました。
これまで手弁当で頑張ってこられた会員の皆さんには、大きな励みになったのではないでしょうか。
このほか、優秀賞を受賞した各企業の取り組みは、様々な創意工夫が満ちていて参考になります。ぜひ、国交省のウェブサイトから受賞企業の資料をダウンロードして、ご覧くださいね。