管理人のイエイリです。
マンション業界では、少子高齢化に伴う少人数世帯や高齢者世帯が増加し、ニーズが多様化する一方、建設段階では労働者不足や労務費、材料費の上昇など、従来のビジネスモデルがだんだん通用しにくくなっています。
そこで長谷工グループは、集合住宅の設計、施工の生産性向上や、入居者の生活の質を向上させるため、AI(人工知能)やロボット、センサー、通信などのICT(情報通信技術)リソースを持つ外部企業と積極的にコラボする「オープンイノベーション」戦略を打ち出しました。

ICT活用とオープンイノベーションの推進について発表する長谷工グループ幹部。左から長谷工コーポレーション専務執行役員の池上一夫氏、同常務執行役員の楢岡祥之氏、長谷工アネシス執行役員の榑松(くれまつ)行雄氏(写真:特記以外は家入龍太)
その中心となる考え方は、住まい情報となるBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)に
ナ、ナ、ナ、ナント、
LIMを統合
し、「住まい情報と暮らし情報のプラットフォーム」を構築しようというものです。
ここでLIMとは長谷工グループの造語で、「ライフ・インフォメーション・モデリング」の略です。つまりマンションに住む人のあらゆる情報をデータ化し、見える化することで、安全・安心やニーズに合った管理、情報サービスや見守り、防災対応などを提供するシステムです。
長谷工コーポレーションでは2012年から、「Revit」をマンション設計用にカスタマイズした「長谷工版BIM」を活用しています。
オープンイノベーションの取り組みとしては、BIMによる自動設計システムの開発があります。これが実現すると、基本的なマンションの規模や仕様、デザインのテイストなどを定義すると、10分もたたないうちにBIMモデルが出来上がります。
BIMによる設計はこれまで、BIMパーツを一つひとつ、マウスで配置しながら行ってきましたが、この自動設計が実現すると間違いなくBIMによる生産性向上に、新しいトレンドが生まれそうですね。
設計段階で施工図レベルのBIMモデルを作るため、販売部門ではVR(仮想現実)と連携したBIMビューワーを使って仮想モデルルームをプレゼンしたり、施工段階ではAR(各超現実)用ツール「HoloLens」を使った出来形管理などを行ったりしていきます。
施工中にはエアロセンスのドローン(無人機)を活用した空撮や施工管理も行っています。現場がさら地の段階で、各住戸のバルコニー位置で周囲の町並みを撮影し、上記のVRで眺望をプレゼンに使います。
また、空撮写真をコンピューターで処理して真上からみた「オルソ画像」をCAD図面と重ね合わせることにより、設計図と現場の差異を確認する作業に使います。
さらに、センサーで温湿度や地震動などを常時観測したり、スマートロックなどでセキュリティーを管理したりする「ICTマンション」の建設も行っていきます。
そして、人手不足なのは建設段階だけでなく、完成後の運用や管理も同様です。例えば、高齢者施設では
ロボットが体操指導
するシステムも開発されているのです。
ロボットにはソフトバンクロボティクスの「Pepper」や「NAO」を活用し、高齢者介護予防体操「ゆうゆう体操」やイスに座ったまま行う「着座位ゆうゆう体操」のアプリを開発しました。
ロボットは、周囲の人に呼びかけながら、身ぶり手ぶりで体操を指導するので、ついつい引き込まれてやってしまいます。その間、人間は会場を回って補助が必要な人などをサポートします。
このほか、長谷工グループでは施工用のロボットや不動産流通におけるマッチングシステムの開発、マンション管理業務の自動化なども進めています。
少子高齢化による人手不足は、これからますます深刻になってきます。BIMやAI、ロボットを活用した生産性向上や省人化によって、人頼りだった建設業を、いかに少ない人数で運営できるビジネスに変えていくのか、その構想力と決断力がますます求められているようです。