管理人のイエイリです。
建設会社にとって、人手不足問題は共通の課題です。そのため、施工段階でロボットやIoT(モノのインターネット)などの活用による生産性向上や省人化が求められます。
しかし、これまでのように各社バラバラにロボットなどの開発を行っていると、開発費や製作費がかさんだり、操作方法が会社ごとに違ったりと、様々な非効率が生まれます。
そこで、ゼネコンの技術開発のうち、“協調領域”の部分で互いに協力し合おうと、結成されたのが「建設RXコンソーシアム」です。2021年9月に鹿島建設、清水建設、竹中工務店を幹事会社とし、大手ゼネコン13社によって設立されました。(2021年9月24日の当ブログ参照)
その後、2022年11月には大林組も参加し、2023年4月には会員企業数が200社を突破するなど、拡大の一途をたどってきました。
そして、2023年6月21日の通常総会で、
ナ、ナ、ナ、ナント、
大成建設が入会
し、幹事会社となり、これでスーパーゼネコン5社がすべて同コンソーシアムに集結したのです。(建設RXコンソーシアムのウェブサイトはこちら)
大成建設は、同コンソーシアムに参加するに当たり、「他社の技術を利用できるメリット」と「自社の技術を他社に公開するデメリット」を慎重に比較検討したのではないでしょうか。
というのは、同社はこれまで、「T-iROBO Cleaner」(現場用自律型清掃ロボット)や「T-BIM Inspection」(BIMとタブレットによる配筋検査)、「T-3DP」など、「T」を冠した様々な建設用ソリューションを独自開発してきたからです。
当サイトでも、これまで“Tシリーズ”のソリューションについての記事を何度も掲載してきました。下の表はその一部です。大成建設の“Tシリーズ”全体だと、さらにこれよりずっと多くなるでしょう。
●大成建設の“Tシリーズ”ソリューションに関する当サイトの記事例 (システム名をクリックすると記事に飛びます)
システム名 | 特徴 |
設計系 | |
T-Flood Analyzer | BIMモデルで建物の浸水解析 |
T-BIM Vibration | BIMによる微小振動の解析 |
T-BIM Environment | BIMで複数の解析モデルを自動作成 |
T-BIMビューア | BIMで環境シミュレーション |
T-Heat Turf | 芝の育成をシミュレーション |
T-REXアドインツール | BIMモデルから施工図を自動作成 |
T-CIM/Tunnel | トンネル線形をCIMモデル化 |
計測系 | |
T-Siteview | 天井裏を360度カメラで把握 |
T-Siteview Draw | 360度パノラマ写真で寸法計測 |
T-BasisX | Wi-Fi機器でロボットの位置を計測 |
T-BEP | 山岳トンネル用地盤レーダー |
施工ロボット系 | |
T-3DP | 建設用3Dプリンター |
T-iROBO Cleaner | 現場用自律型清掃ロボット |
T-iROBO Rebar | 自律型鉄筋結束ロボット |
T-iROBO Slab Finisher | コンクリート床仕上げロボット |
T-iDraw Map | GNSSなしの建機の自動運転 |
T-iROBO Crawler Carrier | クローラーダンプの自動運転 |
T-iCraft | 自動運転建機の協調運転を制御 |
T-iAlert Tunnel | トンネル切羽の落石を自動検知 |
BOLTINGER | ロックボルト打設専用機 |
T-iROBO Breaker | 巨岩を小割りする無人化施工 |
T-iROBO UW | 水中作業用バックホー型ロボ |
T-クイックショット | トンネル切羽に爆薬をホース圧送 |
施工管理系 | |
T-BIM 5D | 工程、原価をBIMで見える化 |
T-BIM Inspection | BIMとタブレットで配筋検査 |
T-Communication | スマホのやりとりを自動的に帳票化 |
T-Gate.Navi | 入退場車両ナンバーを自動記録 |
T-iDigital Field | 現場の安全管理をテレワーク化 |
T-CIM/Concrete | 生コン工事をIoT化 |
T-iROBO Remote Shotcreting | コンクリート吹き付けを遠隔VR化 |
T-iROBO Remote Viewer | HMDによるリアルな無人化施工 |
T-CIM | CIMモデルから各種情報を取りだす |
T-CIM/Dam | CIMモデルによるダム施工管理 |
材料系 | |
T-Green Multi Solar | 太陽光発電パネル付き外装材 |
維持管理系 | |
T-iAlert Structure | 地震時の建物振動や傾きをIoT化 |
T-iPower Beam | センサー用ワイヤレス給電システム |
これだけでも“Tシリーズ”には、
協調領域の技術
が相当、多く含まれていそうです。
競争領域と協調領域を分けて、ライバルである建設会社同士が連携する建設RXコンソーシアムの活動には、海外からも注目が集まっているそうです。
大成建設の参加により、今後ますます、日本の建設DX(デジタル・トランスフォーメーション)が進化していくことを期待したいですね。